お話
少林派の方世玉(孟飛)、洪熙官(李中堅)、陸阿采(劉忠良)をリーダーとする兄弟会は、民を圧政で苦しめる清王朝打倒を目指す革命勢力。
朝廷は武術家達を利用し、これを潰そうとする。
武當派のリーダー馮道德(金剛)に協力を断られた徐大人は、ご隠居の至尊道人(金剛)を訪ね「少林派は役人ばかりか武當派の人間までも殺しており、現リーダーの馮道德は少林派と仲良くしあんたの悪口を言っている」と嘘を突く。
怒った至尊道人は馮道德を殺し、ヅラを被って彼になりすます。
特に顔が似ているという設定でも何でも無いし、わざわざ変装しなくても門弟は言う事を聞くと思うのだが、「ま、いっか」というノリで話は進む。
馮道德のヅラを被った至尊道人は少林派の陸阿采を攻撃する。
洪熙官は、兄弟子の方世玉に止められていたにも関わらず、擎天宮に弟子子の仕返しに行くが、ニセ馮道德の必殺技を食らい、大牛(劉立祖)の家に逃れる(みんな普段から助けて貰っているから知っているのだ)。
追っ手が現れ、危機一髪という所で方世玉が登場、洪熙官を連れ帰るも、どんな技を食らったか判らず治療出来ない。
方世玉の叔父の方大恭(魯平)なら武當派の技にも詳しいが、住処の福建まで重傷の洪熙官を連れて行くのは心配だ。
まずは馮道德と話そうと擎天宮を訪れる方世玉。
放っておけば洪熙官は十日以内の命だと言う。
治療法を教えて欲しければ兄弟会を解散して武術を捨てろ、若しくは自分を倒せと迫られ挑む方世玉だったが、敵に囲まれピ~ンチ!
そこへ陸阿采が現れ、洪熙官を叔父の元へ連れて行けと方世玉を逃がす。
方世玉はワイヤーも無い時代に屋根を跳び越え脱出し、炎天下、頭に何も被せずに洪熙官を叔父の元へと引きずって行くのであった…
そんな超人的な跳躍力があるなら陸阿采無しでも逃げられたよねとか、ここもいちいち立ち止まらずに次行こう!
数秒の診察で胡蝶陰陽催心掌と見抜いた叔父は、洪熙官をぶん投げたりシバいたりし始めた。
驚いて叔父を突き飛ばし罵ってしまう方世玉だが、叔父は血を吐かせ治療をしていたのだ、オーマイガー!
TVではカットされていたが、反省の余り跪く方世玉に叔父は「立ちなさい、この様な状況(弟弟子が死にかけ)なら焦って勘違いするのも無理は無い」
別な意味で「この様な状況」で治療していると思う人はいないと思うが。
回復した洪熙官は、娘の永春と早速イイ感じ。
女でも参加出来るのなら一緒に闘いたい、という永春だが、彼女の父が何と言うか気になる洪熙官。
「父はいつも、何事も我慢だ、増してや女が政治運動などに関わるものではない、と言うけど、それは間違っていると思うの」
そんな彼女に同意し敬意を示す洪熙官(TVでも英語版でも逆の答えをするが)。
洪熙官を気に入ってはいるが、若さ故の性急さ、傲慢さを心配する方大恭は、鶴形拳を教えながら、
「大きな事を成し遂げるには、偏見を捨てなければならない」
と説く。
これがこの物語のどこで活かされているのか、修行不足の住職には判らない…(英語版では「イラチを直しなさい」になっている。)
一方、ニセ馮道德は、部下の顔を赤いセロハンの様にペロリと剥がし、方世玉ら3人に整形し武術を教え(ここがエライがな)、兄弟会を乗っ取ろうとしてていた。
丸くても美形
洪熙官の修行に付き合う永春は、彼の自尊心を傷付けまいとわざと負けていたが、彼の成長の為に良くないと父に諭され、翌日から本気を出す。
女に負けた上、囚われの陸阿采の事が気に掛かり機嫌が悪い洪熙官に、偵察から帰った方世玉は、擎天宮は監視が厳しく近付けないと告げる。
それを聞いた叔父は、救出を手伝う為、2人と共に擎天宮に向かう。
「永春、お前も来なさい」…なぁんだ、お父様、ちゃ~んと判ってるんじゃん♪
叔父達が話し合いでニセ馮道德の気を引いている間に方世玉が陸阿采の救出に向かったが、洪熙官が現われ妨害した。
その為、叔父達に合流するのが遅れ、叔父はニセ馮道德の胡蝶何とか掌を食らい、猿、蛇、虎、鶴の拳法も忘れるなと言い遺し息絶える。
叔父の唐突な無茶ぶりに黙って頷く3人…
洪熙官を責める方世玉に、あれは偽物だと陸阿采。
擎天宮で洪熙官と方世玉の姿を見て幻覚だと思っていたが、偽物だったのだろう。
3人は互いを認識する為の合図を決め、敵を油断させる為に兄弟会の活動を全て停止し、バラバラに仲間達を訓練し秘密で連絡を取り合う事にした。
兄弟会を解散させた褒美に「天下無敵」の看板を贈られたニセ馮道德。
「徐大人、兄弟会を解散させた見返りはこの木の塊かね?」
「これは『栄誉』だよ」
「ほぉ、『栄誉』とは山の中にひっそり運ばれて来るものかね?」
「これはうっかりした、では縁起の良い日を選んで華々しく運び直し、世間に擎天宮の栄誉を知らしめよう」
「間もなく先代の赤松道士の生誕祭だから、その日に」
エンディングの派手なお祭りはそれなのであった… 納得。
兄弟会の解散を疑っているニセ馮道德は、充分な警戒と臨戦態勢を命じる。
そして祭りの日…
海外から雇った様なエキゾチックながらやる気ナシのエキストラで賑わう擎天宮界隈。
獅子達の間を行進する徐大人と「栄誉」。
顔丸出しで龍舞に紛れ込む方世玉と洪熙官…
しかも前で玉を持つ花形だ。
陸阿采だけは獅子の頭に隠れて近付き、最初に攻撃を仕掛ける。
冒頭で襲われたのが獅子舞の最中だったので、仕返しだろうか???
偽物達が呼び出されるが、本物の3人の智恵と技には敵わない。
馮道德の正体を聞き出した3人は、偽物の振りをして隠れ家に戻る。
至尊道人は高齢故か、言う事が都度、違っていてどれを信じていいか判らないのだが、徐大人により、取り敢えず武林に君臨したいという野望に目覚めてしまった様だ。
その徐大人は、洪熙官と陸阿采に成敗される。
闘いの最中にヅラが外れ、正体(正頭?)が露わになる至尊道人。
そうか、白髪だったのか、てっきり修行し過ぎて仙人の域に入ったのかと思っていた。
老人という設定には目から鱗だ。
その白髪も方世玉に剥がれてツルッパゲになり、もはやどっちとも言えない状態の至尊道人は、駆け付けた2人にトドメを刺され空中悶絶… めでたしめでたし。
外では祭りが続いており、洪熙官と永春を獅子を被った方世玉と陸阿采が笑顔でからかい劇終…
敵の祭りだが、そんなの気にしない気にしない♪
泣きそーアクション
見所
敵のアジトとなっている擎天宮の入り口の「不二門」はロケ地としては有名な様だが、日本ではあんまり知られていないのか情報が無い。
住職は孟飛さまにロケ地をお伺いしていたので、探し出して2012年4月に行って来たぞぇ。
その内、御紹介しようと思うが、どこにあるかは、下の御本人情報を御覧頂きたい。
但し、あの尖った塔は無く、現地の尼さんにお訊きしても昔から無かったとの事。
更に、叔父が殺される所にある石碑は、帰国してから台北は淡水にあると知った住職、機会があればリベンジの旅に出たいと思っているが、又10年位先になりそうな気がする。
さてさて、中文版により様々な事実が明らかになったのだが、日本語TV吹替版は相変わらずいい加減この上無い事が判る。
まぁ、英語版を元にして、原作を尊重する意図も無く「コンパクト」にしているのだから仕方は無いが。
陸阿采が3人の中で一番弟だったなんて、誰が想像しようか?!
あのふてぶてしい態度、わたしゃ方世玉と同等位なのかと思っていたが、あれは流石に編集ではなく演技の問題だ。
台詞の面白さや作品に込められたメッセージなどは、やはり中文版でないと伝わらない事が多い。
原文を確認しないでツッコむのは、ちょっと違うと思うの住職は… という事で、原文を確認した上でツッコみまくってみた。
方世玉の台詞の端々にも彼の人間性が表れており、ストーリーがテキトーでも部分的にシビレる事が出来る。
中文版を御覧になれない方は、住職の熱い語りでシビレたつもりになって頂ければと思う。
以下、中文版を観ないと判らない部分を挙げておこう。
TV放映版のオープニングは英語版と同じもので、陳觀泰がメインキャストとしてクレジットされているが出演はしておらず、中文版ではちゃんとスタッフ側に名前がある。
間違いなのか、それともその方が客が入るのか…?!
観た客から「何だ劉忠良だったじゃねぇかー!」などとクレームは出ないのか… なんて事はどーでもいいので次行こう!
洪熙官を匿った民家のシーンでは、助っ人の方世玉が武當派の道士達を茶目っ気たっぷりに撃退する。
例えば、道士は髪型から「牛鼻子」と呼ばれている為、鼻をつまんでからかう。
続いて、相手の技を返しながら、その1つ1つにおどけて名前を付けて行く(以下は住職による意訳)。
「今の『やみくも拳法』はまだまだだな」
「今のは、え~と… 判ったぞ、『自業自得拳』!」
「『満身創痍』、なかなかイイぞ!」
何を言っているか判った途端、方世玉の動作に意味が生まれ、まばゆく輝き始めたではないか…
孟飛城主に出逢って2作目なので思い出はあるもののイマイチな映画だと思っていたが、やっぱり方世玉は素敵だ♪
吹替は役者の演技を殺す。
如何に声優が優秀でも、訳のマズさは覆せない。
音楽がマズくてTVでは入れ替えてある事があるが、それに関してはあっぱれな事も多い。
モォ~ッ!…という声は、「牛拳」かと思いきや、上述の「牛の鼻」即ち武當派を表す効果音である。
無くても衣装で判るがな。
動物の鳴き声以外にも不思議な機械音など多用されており、音楽を長く流し過ぎて拳銃の音が入ってしまったり、と和ませてくれる。
メエェェエ… と羊の鳴き声を発するのは3人の偽物。
テーマ曲はどこからパチって来たのだろう、これ好き❤
3人以外の日本語版名は勝手に付けた名前、叔父は英語版では正しいがTVでは「先生」となっている。
それから、不自然に見えた偽物の修行シーンとラストバトルの方世玉VS金剛でのストップモーションでは、本来は技の名前が表示されていたのだ。
英語版製作の際には、英語文化圏に通用しない概念などは元から訳出されておらず、ストーリーも敢えて単純に変えてある事も多い。
もはや言葉すら必要としない「絵本」と化している為、TV用のバッサリ編集で良心の呵責に苛まれる事も無かろう。
この手の映画の評価が高くなる訳が無いわな。
馮道德(TVではライコw)に攻撃された事を「仲間なのに何故だろう」とは全く意味不明なのだが、彼らが武當派を「牛の鼻野郎」と呼んでいる事からも、敵とは言わない迄も、普段から仲が宜しくない事は推測される。
「馮道德が少林派と仲良くしている」とは至尊道人(TVではチャン)を仲間に入れる為の嘘であり、逆に仲良くすべき相手ではないという事を表してる。
それでなくとも少林と武當は敵という設定になっている事が多いというのに、マジボケなのか、或いは例によって余計なドラマを加えてクリエイター気取りか… 住職、書いてる内に腹が立って来た也。
中文版の最後には台北と高雄の舞獅・龍舞団体がクレジットされているが、祭りのエキストラは彼らなのだろうか?
日焼けが凄いのだが。
よく見ると武當派のエキストラと闘っているが、どっちも下手過ぎて気付かなんだ… ポクポクポクポク(木魚連打)。
長い足アクション
さて、孟飛城主に関しては、住職のお気に入りは、何だか妙に色っぽい修行中の偽方世玉。
方世玉の時は、今回はアップのシーンが真ん丸い事が多い。
強烈な日差しで余計にそう見えるのかも知れない。
しかし、いつもながらの長~い足に泣きそーアクションも全開、TVではカットされているが、ただ馬に乗っているだけでもカッコいいし、降り方も素敵…
でもヅラが寝ぐせとはどういうことですねん???!!
御本人情報1
上述の「馬の降り方」であるが、普通は馬のお尻側から跨いで乗り降りするところ、孟飛さまは、前へ足を上げ馬の首を跨ぎ越し、跳び降りられるのだ。
演出なのか御本人のアイデアか、孟飛さまにお訊きしたところ、御自身がお考えになったとのこと…
クラクラの実況及び詳細は
タレコミ寺内記事をどうぞ。
御本人情報2
金だか黄色だかの像がズラリ~ンと並んだラストファイトの
ロケ地をお訊きしたところ、台湾南部の高雄にある
佛光山寺であることが判明。
神刀流星拳のラストも同じ場所である。
阿采を助けに寺を訪れた方世玉が見上げたあの仏塔が、高雄にあったとは♪
あのシーンに憧れて、代わりに色んな塔を見上げていた住職であるが、いつかホンモノを見上げに行くぞ~~~!
めくるめく実況及び詳細は
タレコミ寺内記事をどうぞ。(塔は別の場所であった…ポクポクポクポク)
製作/台湾 公開 1978年10月19日